「精油はどうしてこんなに高いの?」と思ったときに読む話

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「エッセンシャルオイル(精油)が高すぎる!」と思ったことはありませんか?

多くのエッセンシャルオイルは1本1000円前後のものが多く、簡単に買える金額ではありません。
また、ローズやネロリ、ジャスミンなど、中には数千円もする精油すらあります。なぜ、精油の種類によって、このような価格差が生じるのでしょうか?

このページでは、なにが精油の価格に影響を与えるのかについて、見ていきたいと思います。

目次

エッセンシャルオイルの価格に影響を与える要因

エッセンシャルオイルの価格は、一般的に、原料となる植物の価値と、生産にかかる労力や時間によって決まってきます。

要するに、珍しい植物は高くなるし、ありふれた植物は安くなる。オイルを抽出するために何トンもの植物が必要なら高くなるし、数キロの植物でよければ安くなる。そういった複数の要素の掛け算によって、エッセンシャルオイルの値段が決まってくるわけです。

  • 植物の希少性
  • 植物の成長とライフサイクル
  • 植物の収穫のしやすさ
  • 精油の収量

植物の希少性

たとえば、ミント科の植物(ペパーミント、スペアミント)は世界中にあり、どこでも簡単に育てられます。これらの植物を使ったエッセンシャルオイルの価格は比較的安くなります。

一方、フランキンセンスやミルラなどは、特定の自然環境以外では育てるのが困難です。こういった世界的にも希少な植物は、エッセンシャルオイルの価格も高くなります。

植物の成長とライフサイクル

ペパーミントのように育てやすい、あるいは豊富に生育する植物は、生産にかかる労働力やコストが少なくて済むので、エッセンシャルオイルの価格も安くになります。ペパーミントやスペアミントを育てたことのある人は、このハーブがどれだけ早く成長して広がっていくかご存知でしょう。

一方で、例えばサンダルウッドなど、オイルが収穫できるまでに一定の年数が必要となる植物の場合は、エッセンシャルオイルもそれだけ高くなります。

収穫のしやすさ

エッセンシャルオイルは、花や葉、果実、樹皮、根など、さまざまな部分から得ることができます。エッセンシャルオイルがどのような植物から、さらにどの部位から得られるかによって、その植物を収穫したり加工したりするのに必要な労働力が変わってきます。

ペパーミントであれば芝刈り機のような機械で大量に収穫することができますが、ジャスミンのように非常にデリケートな花の場合は、香りを保つために夜間に手で摘む必要があります。

エッセンシャルオイルの収量

もし植物中にたくさんのエッセンシャルオイルが含まれていれば、それを抽出するための労働力やコストも小さくて済みます。ただ、そのような植物は実際には多くありません。

例えば、ラベンダーには強い芳香がありますが、エッセンシャルオイルはわずかしかとれないため、1リットルの精油を得るために150kgのラベンダーの穂先が必要になると言われます。

ローズの場合はもっと極端で、1滴を抽出するためにバラの花50個ほどが必要になると言われています。豪勢なバラの花束をもってしても、その花束からはわずか1滴の精油すらとれないのです。

収油率(しゅうゆりつ)とは

植物から抽出できるエッセンシャルオイルの割合のことを収油率と言います。これは植物によって異なりますが、収油率の値が低いほど精油がとりにくく、価格も割高になります。

精油の収油率の例
  • ユーカリ・グロブルス 2~3%
  • ラベンダー 0.6~0.7%
  • ローズ 0.01~0.06%

収油率は精油を抽出する時期によっても変わります。例えば、ラベンダーなら開花直後の7月中旬から下旬、クラリセージなら開花後期の6月下旬に高い収油率を示します。収油率は産地や季節、蒸留メーカーの経験やノウハウなどによっても変わってきます。

おまけ:為替(円安)の影響

これは日本特有の要因ともいえますが、最近の「円安」もエッセンシャルオイル価格の高騰に一役かっています。

ヒノキやユズなどの日本特有の精油をのぞけば、精油の大部分は海外からの輸入に頼っています。1ドル100円のときと比べれば、1ドル150円の現在は精油の仕入れ価格は1.5倍になっています。

為替変動の要因は複雑でひとことでは言えませんが、コロナ禍以降の日本のインフレ率は世界と比べても低く、また経済成長率も相変わらず低いことを考えると、この円安傾向はしばらく続くのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

エッセンシャルオイルの価格は、原料植物の価値と、作るのにかかる時間や手間で決まります。また、精油がどれだけ植物に含まれているか(収油率)によっては、必要となる植物の量が膨大になり、より多くの原材料費や生産コストがかかる場合もあります。

精油は大変貴重なものです。精油になる前の植物の姿を頭に思い浮かべつつ、大切に使いましょう。

著者プロフィール
元AEAJアロマテラピーインストラクター。エッセンシャルオイルの貿易実務に20年以上たずさわってきました。海外のアロマの文献などもチェックしています。

参考文献:
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダ・セラー著 フレグランスジャーナル社
「精油の安全性ガイド(上巻、下巻)」ロバート・ティスランド著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー事典」パトリシア・デービス著 フレグランスジャーナル社
「エッセンシャルオイル総覧2007」三上杏平著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト(1級、2級)」鳥居鎮夫監修 社団法人日本アロマ環境協会
「アロマテラピーの事典」林真一郎著 東京堂出版
「キャリアオイル事典」レン・プライス著 東京堂出版
「アロマテラピー図鑑」佐々木薫監修 主婦の友社
「女性によく効くアロマセラピー」鮫島浩二著 主婦の友社
「アロマテラピーの事典」篠原直子著 成美堂出版
「はじめてのアロマテラピー」佐々木薫監修 池田書店
「はじめる、楽しむ アロマテラピー」石原裕子監修 永岡書店
「アロマテラピーバイブル」塩屋紹子監修 成美堂出版

アロマテラピーは、病気の治療を目的とした医療行為ではありません。また、当サイトの情報は、精油の医学的な効能、効果を保証するものでもありません。精油を使用する際には、製品についての注意事項をよく読み、自己責任の下、正しくお使い下さい。妊娠中の方、病気のある方、健康状態のすぐれない方は、必ず事前に医師にご相談下さい。 なお、一般的な呼称に合わせて、エッセンシャルオイル(精油)をアロマオイルと表記する場合もあります。

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