アロマテラピーはなぜ効く? 香りが脳に働きかけるメカニズム

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そもそも、アロマテラピーはなぜ効くのでしょうか?
どうして精油の香りを嗅ぐとリラックスしたりリフレッシュしたりするのでしょうか?

この疑問に答えるには、香りが脳にどのように作用するのかを理解しておく必要があります。なぜアロマテラピーがこころだけでなくからだにも影響するのか、その仕組みを見ていきましょう。

目次

嗅覚は動物的で原始的な感覚である

生命を守るために大切なのはスピード

食料も少なく、まわりにたくさんの外敵がいる、原始的な世界を考えてみましょう。

腐った木の実や肉を食べていたら、お腹を壊して死んでしまうかもしれませんし、洞穴にいる外敵の匂いやフンの匂いに気がつかなければ、やはり死んでしまうかもしれません。

人間も動物の一種ですから、とにかく生き延びて子孫を残すことが重要になります。匂いというのは、食料を見分けるためにも、外敵から身を守るためにも、とても大切な情報です。飢え死にしないために、そして外敵に襲われないために、とにかく早い判断が求められます。

そのため、嗅覚というのは、「快」と「不快」という直感的な感情と強く結び付けられる形で発達してきました。匂いに対して「好き」か「嫌い」か、「心地良い」か「心地良くない」か、どちらかを即座に判断する必要があるのです。

「好き」と判断すれば、ホッとしたり、安心したりするでしょう。「嫌い」と判断すれば、ストレスを感じ、からだは緊張するでしょう。すぐにその場を離れないといけないかもしれません。

大脳辺縁系の役割

「好き」「嫌い」という感情は、健康に大きな影響を与える

脳には「大脳辺縁系」(だいのうへんえんけい)という部位が存在します。これは大脳の内側に位置する部分で、人間だけでなく、他の動物にも見られます。大脳辺縁系は「感情」や「欲求」など、いわゆる「情動」に関与する部分で、意欲や記憶、内分泌系、そして自律神経系に関与する複数の器官があります。

「快」や「不快」といった判断を行う「扁桃体」(へんとうたい)や、記憶をつかさどる「海馬」(かいば)も、この大脳辺縁系に属します。

嗅覚によって感知された香りは電気信号に変わり、脳内のこの大脳辺縁系に到達します。そこで、過去の記憶などとも照らし合わせ、「快」「不快」の判断を即座に下します。このとき大脳新皮質における論理的な思考を経ないで、スピーディに判断が行われることがポイントです。つまり、香りが好きか嫌いかというのは、理屈ではないのです。

「快」「不快」の判断は、すぐそばの視床下部にもたらされます。視床下部は自律神経の中枢であり、自分の体をコントロールする部分です。これには、体温の調整、血圧、心拍数、食事や水分摂取、性的行動、睡眠などの本能的な行動や、怒りや不安のような感情的な行動が含まれます。つまり、「快」「不快」によって、人間の感情や体調が大きく影響を受けるということです。

こころとからだはつながっている

うれしいとき、楽しいときは、体も軽やかで体調も良く、疲れすら感じないこともあります。逆に、悲しいとき、不安なときは、体に不調があらわれやすく、意欲も失われ、寝付きも悪くなります。

心と体が密接に結びついているということは、多くの人が実体験として理解しており、それを疑う人は少ないでしょう。

アロマテラピーは、心地よい香りを嗅ぐことで嗅覚を刺激し、気持ちを明るく、穏やかにして、心と体の両面からトータルで健康になろう、という考え方です。ですので、自分が心地よいと考える香りを活用することが大切になります。

ラベンダーには鎮静作用があると考えられていますが、ラベンダーの香りが嫌いな人は、その香りを嗅ぎ続けてもあまり意味がないかもしれません。

ペパーミントは一般的に気分をシャキッとさせ、覚醒させる働きがあると考えられていますが、ペパーミントが大好きな人の中には、この香りがあるとぐっすり眠れる、という人もいます。

香りの好みは、味覚以上に人それぞれです。自分の好きな香りを見つけて、ご自身の健康のためにうまく活用してください。

精油が作用する4つの経路

ここまでは、主に香りが嗅覚を通じて脳に働きかける仕組みをみてきましたが、アロマテラピーではエッセンシャルオイル(精油)を使ってお肌にトリートメントする方法も用いられます。

以下では、エッセンシャルオイルの成分がからだに取り込まれる4つのルートについて見ておきましょう。

1. 嗅覚から脳に作用するメカニズム

鼻から取りまれた香りの分子は、鼻の奥にある粘膜で電気信号に変換されて大脳辺縁系に伝達されます。さらに、この電気信号は、自律神経の中枢であり、ホルモンや免疫系の分泌を促す視床下部に伝達されます。

2. 皮膚から吸収されるメカニズム

これはトリートメントの場合になりますが、キャリアオイルにより希釈されたエッセンシャルオイルの有効成分は、皮膚の表層部分(表皮)よりさらに下の真皮にまで到達する優れた浸透力を持っています。吸収された精油の成分は、体液や血液、リンパ液などにのって体中に運ばれます。

3. 肺から吸収されるメカニズム

鼻や口から取り込まれた香りの分子は、鼻や肺の粘膜から血管壁を通って血液に吸収され、血流を介して全身に行き渡ります。

4. 消化器官から吸収されるメカニズム(参考)

海外では医師の指導のもとエッセンシャルオイル(精油)を内服する場合があります。しかし、肝臓や腎臓に重大な影響を及ぼしたり、神経組織に影響を与える場合もありますので、素人が勝手な判断で行なってはいけません。 一部の精油は、わずか1本で致死量に達するものもあります。精油の内服は非常に危険ですので、絶対に避けて下さい。また、乳幼児が誤って飲み込んだりしないよう、保管には十分お気をつけ下さい。

まとめ

アロマテラピーは、香りが脳の大脳辺縁系を刺激し、感情や自律神経系を調整するメカニズムに基づいています。香りを感じたとき、脳は「快」や「不快」の直感的な判断を行い、これが自律神経の中枢である視床下部に伝達されて、体の機能に影響を及ぼします。

アロマテラピーは心と体の両面からトータルに健康をサポートするためのものです。香りの好みは人それぞれなので、自分が心地よいと感じる香りを活用することが大切です。

著者プロフィール
元AEAJアロマテラピーインストラクター。エッセンシャルオイルの貿易実務に20年以上たずさわってきました。海外のアロマの文献などもチェックしています。

参考文献:
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダ・セラー著 フレグランスジャーナル社
「精油の安全性ガイド(上巻、下巻)」ロバート・ティスランド著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー事典」パトリシア・デービス著 フレグランスジャーナル社
「エッセンシャルオイル総覧2007」三上杏平著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト(1級、2級)」鳥居鎮夫監修 社団法人日本アロマ環境協会
「アロマテラピーの事典」林真一郎著 東京堂出版
「キャリアオイル事典」レン・プライス著 東京堂出版
「アロマテラピー図鑑」佐々木薫監修 主婦の友社
「女性によく効くアロマセラピー」鮫島浩二著 主婦の友社
「アロマテラピーの事典」篠原直子著 成美堂出版
「はじめてのアロマテラピー」佐々木薫監修 池田書店
「はじめる、楽しむ アロマテラピー」石原裕子監修 永岡書店
「アロマテラピーバイブル」塩屋紹子監修 成美堂出版

アロマテラピーは、病気の治療を目的とした医療行為ではありません。また、当サイトの情報は、精油の医学的な効能、効果を保証するものでもありません。精油を使用する際には、製品についての注意事項をよく読み、自己責任の下、正しくお使い下さい。妊娠中の方、病気のある方、健康状態のすぐれない方は、必ず事前に医師にご相談下さい。 なお、一般的な呼称に合わせて、エッセンシャルオイル(精油)をアロマオイルと表記する場合もあります。

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