精油はどのように作られるのでしょうか? また、家庭で作ることはできるのでしょうか?
精油は自然の植物から得られるオイルですが、「作る」というよりは、「抽出する」という言い方のほうが適しています。香りの成分を「抜き出す」というイメージですね。
子供のころ、みかんの皮を指でグッと押しつぶして、汁をピュッと出した経験はないでしょうか? このときに出る液体も、実は「精油」です。精油の中には、このように圧力をかけてしぼり出すものもあります。
以下では、代表的な抽出方法をご紹介します。
このページを読めば、精油の抽出の仕方(取り出し方)のイメージがつかめますよ!
エッセンシャルオイルの抽出方法について
1. 「水蒸気蒸留法」(すいじょうきじょうりゅうほう)
ラベンダーやペパーミントなど、ハーブ全般に用いられる抽出方法
水蒸気蒸留法は、現在、最もよく利用されている抽出方法です。ラベンダー、ペパーミント、ローズマリーなど、多くの精油はこの抽出法により抽出されます。
- 原料となる植物を蒸留釜(ステンレス製)に入れる
- 水を熱して発生した水蒸気を蒸留釜の下から通し、原料植物を蒸す
- 気化した芳香成分が水蒸気と混ざりあう
- 芳香成分を含んだ水蒸気を冷却管で冷やして液体にする
- 比重の違いによって液体を分離する。上側にエッセンシャルオイル(精油)、下側にフローラルウォーター(ハイドロソル)ができる
1. 収量が多い
2. コストが低い
3. 設備が簡単で操作しやすい
2. 「圧搾法」(あっさくほう)
スイートオレンジやレモンなど、柑橘系に用いられる抽出方法
圧搾法は、オレンジやレモン、グレープフルーツなど、果物の果皮から精油を抽出する方法です。以前は手作業で皮を押しつぶしていましたが、最近は機械で果実ごと潰して、最後に精油と果汁を分離します。
加工中に熱を加えないため、コールドプレス製法(低温圧搾法)とも呼ばれます。
- 原料になる果実に穴をあけ、つぶす
- 機械で大きな圧力をかけ、果皮と果実を完全につぶし、液体を絞り出す
- フィルターでろ過して、固形物やカスを取り除く
- 比重の違いによって液体を分離する。上側にエッセンシャルオイル(精油)、下側にジュース(果汁)ができる
1. 熱を加えないため、オイルの変性が少ない
2. 抽出したオイルの香りは、天然の果実の香りにかなり近い
3. コストが低い
3. 揮発性有機溶剤抽出法(きはつせいゆうきようざいちゅうしゅつほう)
ローズ、ジャスミンなど、デリケートな植物に使用される抽出方法
溶剤抽出法は、ローズやジャスミンのように油分の量が非常に少なく、また水蒸気蒸留に向かないデリケートな植物に対して使用されます。
この方法を使うと、水蒸気蒸留法よりも強い香りで、より多くの量が得られるため、香水や化粧品の用途としてもよく用いられます。
- 揮発性の有機溶剤(ヘキサンや石油エーテルなど)に原料植物を入れ、一定の温度と圧力をかける
- 芳香成分や油脂、ワックスなどの親油性の成分(オイルに溶けやすい成分)が溶剤に溶け出す
- 出来上がった溶剤、芳香成分、油脂、ワックスなどの混合物を冷やすとペースト状、固形状になる。これを「コンクリート」という
- 混合物(コンクリート)にエタノールを混ぜると、より極性の高いエタノールに芳香成分が溶け出す
- 加熱してエタノールを揮発させ、エッセンシャルオイル(精油)を取り出す
この方法で取り出される精油のことを「アブソリュート」と呼びます。
(「アブソリュート」は精油のひとつとして位置づけられていますが、「厳密な意味での精油とは違うのでは?」とする考え方もあります。)
1. 水蒸気蒸留法よりも低い温度で抽出することができる
2. 取り出された「アブソリュート」は高濃度の芳香物質で、香りがつよく、植物本来の香りに近い
「アブソリュート」の中に微量の溶剤が残ってしまうこともあり、お肌に使用したときに炎症などを引き起こす可能性がある
- 溶剤抽出法で抽出された精油のうち、花から得られたものを「アブソリュート」といい(ローズやジャスミンなど)、樹脂から得られたものを「レジノイド」といいます(ベンゾインなど)
- 溶剤抽出法によって抽出されたローズ精油を「ローズ・アブソリュート」といい、水蒸気蒸留法によって抽出されたローズ精油を「ローズ・オットー」といいます。
4. 超臨界流体抽出法(ちょうりんかいりゅうたいちゅうしゅつほう)
二酸化炭素をつかった新しいタイプの抽出方法
超臨界流体抽出法は、1980年代に導入された新しい技術で、通常は二酸化炭素を溶媒として使用します。(そのため、二酸化炭素抽出法とも呼ばれます。)
コストがかかるのでそれほど普及はしていませんが、低温で抽出することができるため、芳香成分をそこなうことなく精油をを取り出すことができます。また、二酸化炭素を使うため、溶剤のような残留物が残らないのも大きな魅力です。
- 二酸化炭素を加圧し(100気圧ほど)、気体と液体の両方の性質を兼ね備えた「超臨界流体」と呼ばれる状態にする
- この二酸化炭素を原料植物に混ぜると、芳香成分が二酸化炭素に溶け出す
- 圧力を戻すと二酸化炭素は気体となり、液体のエッセンシャルオイル(精油)が残る
- 植物本来の香りに近い、豊かな香りの精油を取り出すことができる
- 残留物が残らないため、より安全にアロマテラピーを楽しむことができる
まとめ
いかがでしたでしょうか?
植物からエッセンシャルオイル(精油)を抽出する方法としては、「水蒸気蒸留法」「圧搾法」「揮発性有機溶剤抽出法」「超臨界流体抽出法(二酸化炭素抽出法)」の4つが主に利用されています。
もっともポピュラーなのは「水蒸気蒸留法」で、オレンジやレモンなどの柑橘系には「圧搾法」、ローズやジャスミンなどのデリケートな植物には「揮発性有機溶剤抽出法」が使用されています。