精油はどのように作られるの? 代表的な4つの抽出方法について

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精油はどのように作られるのでしょうか? また、家庭で作ることはできるのでしょうか?

精油は自然の植物から得られるオイルですが、「作る」というよりは、「抽出する」という言い方のほうが適しています。香りの成分を「抜き出す」というイメージですね。

子供のころ、みかんの皮を指でグッと押しつぶして、汁をピュッと出した経験はないでしょうか? このときに出る液体も、実は「精油」です。精油の中には、このように圧力をかけてしぼり出すものもあります。

以下では、代表的な抽出方法をご紹介します。
このページを読めば、精油の抽出の仕方(取り出し方)のイメージがつかめますよ!

目次

エッセンシャルオイルの抽出方法について

1. 「水蒸気蒸留法」(すいじょうきじょうりゅうほう)

引用:Essential Oil Extraction: Being Green and Emerging Technologies

ラベンダーやペパーミントなど、ハーブ全般に用いられる抽出方法

水蒸気蒸留法は、現在、最もよく利用されている抽出方法です。ラベンダー、ペパーミント、ローズマリーなど、多くの精油はこの抽出法により抽出されます。

  1. 原料となる植物を蒸留釜(ステンレス製)に入れる
  2. 水を熱して発生した水蒸気を蒸留釜の下から通し、原料植物を蒸す
  3. 気化した芳香成分が水蒸気と混ざりあう
  4. 芳香成分を含んだ水蒸気を冷却管で冷やして液体にする
  5. 比重の違いによって液体を分離する。上側にエッセンシャルオイル(精油)、下側にフローラルウォーター(ハイドロソル)ができる
水蒸気蒸留法のメリット

1. 収量が多い
2. コストが低い
3. 設備が簡単で操作しやすい

2. 「圧搾法」(あっさくほう)

引用:Fragrance & Essential Oil Extraction (comprehensive guide)

スイートオレンジやレモンなど、柑橘系に用いられる抽出方法

圧搾法は、オレンジやレモン、グレープフルーツなど、果物の果皮から精油を抽出する方法です。以前は手作業で皮を押しつぶしていましたが、最近は機械で果実ごと潰して、最後に精油と果汁を分離します。

加工中に熱を加えないため、コールドプレス製法(低温圧搾法)とも呼ばれます。

  1. 原料になる果実に穴をあけ、つぶす
  2. 機械で大きな圧力をかけ、果皮と果実を完全につぶし、液体を絞り出す
  3. フィルターでろ過して、固形物やカスを取り除く
  4. 比重の違いによって液体を分離する。上側にエッセンシャルオイル(精油)、下側にジュース(果汁)ができる
圧搾法のメリット

1. 熱を加えないため、オイルの変性が少ない
2. 抽出したオイルの香りは、天然の果実の香りにかなり近い
3. コストが低い

3. 揮発性有機溶剤抽出法(きはつせいゆうきようざいちゅうしゅつほう)

引用:UNTAPPING THE POWER OF NATURE: ESSENTIAL OIL EXTRACTION METHODS

ローズ、ジャスミンなど、デリケートな植物に使用される抽出方法

溶剤抽出法は、ローズやジャスミンのように油分の量が非常に少なく、また水蒸気蒸留に向かないデリケートな植物に対して使用されます。

この方法を使うと、水蒸気蒸留法よりも強い香りで、より多くの量が得られるため、香水や化粧品の用途としてもよく用いられます。

  1. 揮発性の有機溶剤(ヘキサンや石油エーテルなど)に原料植物を入れ、一定の温度と圧力をかける
  2. 芳香成分や油脂、ワックスなどの親油性の成分(オイルに溶けやすい成分)が溶剤に溶け出す
  3. 出来上がった溶剤、芳香成分、油脂、ワックスなどの混合物を冷やすとペースト状、固形状になる。これを「コンクリート」という
  4. 混合物(コンクリート)にエタノールを混ぜると、より極性の高いエタノールに芳香成分が溶け出す
  5. 加熱してエタノールを揮発させ、エッセンシャルオイル(精油)を取り出す

この方法で取り出される精油のことを「アブソリュート」と呼びます。
(「アブソリュート」は精油のひとつとして位置づけられていますが、「厳密な意味での精油とは違うのでは?」とする考え方もあります。)

溶剤抽出法のメリット

1. 水蒸気蒸留法よりも低い温度で抽出することができる
2. 取り出された「アブソリュート」は高濃度の芳香物質で、香りがつよく、植物本来の香りに近い

溶剤抽出法のデメリット

「アブソリュート」の中に微量の溶剤が残ってしまうこともあり、お肌に使用したときに炎症などを引き起こす可能性がある

その他の情報
  • 溶剤抽出法で抽出された精油のうち、花から得られたものを「アブソリュート」といい(ローズやジャスミンなど)、樹脂から得られたものを「レジノイド」といいます(ベンゾインなど)
  • 溶剤抽出法によって抽出されたローズ精油を「ローズ・アブソリュート」といい、水蒸気蒸留法によって抽出されたローズ精油を「ローズ・オットー」といいます。

4. 超臨界流体抽出法(ちょうりんかいりゅうたいちゅうしゅつほう)

引用:UNTAPPING THE POWER OF NATURE: ESSENTIAL OIL EXTRACTION METHODS

二酸化炭素をつかった新しいタイプの抽出方法

超臨界流体抽出法は、1980年代に導入された新しい技術で、通常は二酸化炭素を溶媒として使用します。(そのため、二酸化炭素抽出法とも呼ばれます。)

コストがかかるのでそれほど普及はしていませんが、低温で抽出することができるため、芳香成分をそこなうことなく精油をを取り出すことができます。また、二酸化炭素を使うため、溶剤のような残留物が残らないのも大きな魅力です。

  1. 二酸化炭素を加圧し(100気圧ほど)、気体と液体の両方の性質を兼ね備えた「超臨界流体」と呼ばれる状態にする
  2. この二酸化炭素を原料植物に混ぜると、芳香成分が二酸化炭素に溶け出す
  3. 圧力を戻すと二酸化炭素は気体となり、液体のエッセンシャルオイル(精油)が残る
超臨界流体抽出法のメリット
  1.  植物本来の香りに近い、豊かな香りの精油を取り出すことができる
  2.  残留物が残らないため、より安全にアロマテラピーを楽しむことができる

まとめ

いかがでしたでしょうか?

植物からエッセンシャルオイル(精油)を抽出する方法としては、「水蒸気蒸留法」「圧搾法」「揮発性有機溶剤抽出法」「超臨界流体抽出法(二酸化炭素抽出法)」の4つが主に利用されています。

もっともポピュラーなのは「水蒸気蒸留法」で、オレンジやレモンなどの柑橘系には「圧搾法」、ローズやジャスミンなどのデリケートな植物には「揮発性有機溶剤抽出法」が使用されています。

著者プロフィール
元AEAJアロマテラピーインストラクター。エッセンシャルオイルの貿易実務に20年以上たずさわってきました。海外のアロマの文献などもチェックしています。

参考文献:
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダ・セラー著 フレグランスジャーナル社
「精油の安全性ガイド(上巻、下巻)」ロバート・ティスランド著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー事典」パトリシア・デービス著 フレグランスジャーナル社
「エッセンシャルオイル総覧2007」三上杏平著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト(1級、2級)」鳥居鎮夫監修 社団法人日本アロマ環境協会
「アロマテラピーの事典」林真一郎著 東京堂出版
「キャリアオイル事典」レン・プライス著 東京堂出版
「アロマテラピー図鑑」佐々木薫監修 主婦の友社
「女性によく効くアロマセラピー」鮫島浩二著 主婦の友社
「アロマテラピーの事典」篠原直子著 成美堂出版
「はじめてのアロマテラピー」佐々木薫監修 池田書店
「はじめる、楽しむ アロマテラピー」石原裕子監修 永岡書店
「アロマテラピーバイブル」塩屋紹子監修 成美堂出版

アロマテラピーは、病気の治療を目的とした医療行為ではありません。また、当サイトの情報は、精油の医学的な効能、効果を保証するものでもありません。精油を使用する際には、製品についての注意事項をよく読み、自己責任の下、正しくお使い下さい。妊娠中の方、病気のある方、健康状態のすぐれない方は、必ず事前に医師にご相談下さい。 なお、一般的な呼称に合わせて、エッセンシャルオイル(精油)をアロマオイルと表記する場合もあります。

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