アロマテラピーの歴史 人と香りとの関わりについて

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アロマテラピーはいつ頃からはじまったのでしょうか? 
また、どのように発展してきたのでしょうか?

「アロマテラピー」という言葉が生まれたのは1930年代ですが、人と香りとの関わりは古代エジプト時代までさかのぼります。 人間がどのように香りを利用してきたのか、その歴史をざっと振り返ってみましょう。

目次

それは古代エジプトからはじまった

エジプトではミイラ作りのためにフランキンセンスやミルラが使われ、儀式の際には香りを焚く薫香が行われました。
古代ギリシャでは、アリストテレスの弟子であるテオフラストスが植物の分類や研究に従事して「植物学の祖」と呼ばれ、古代ローマではプリニウスが全37巻にも及ぶ壮大な『博物誌』を著しました。

また、『新約聖書』には東方の三賢人がイエス誕生の際に黄金と乳香(フランキンセンス)、没薬(ミルラ)を捧げたというくだりがあります。

東洋における香り文化のはじまり

アジアにおいても、ヨーロッパと同様の動きが見られます。
古代インドの医療システムであるアーユルヴェーダにも、ハーブを使った自然療法が確認できますし、古代中国においても、シナモン(桂皮)やジンジャー(ショウガ)、サンダルウッド(白檀)などが、主に医学の場で使われるようになりました。

精油の蒸留には「錬金術」が寄与

精油の蒸留(じょうりゅう)がはじまった時期は定かではありませんが、芳香蒸留水を製造し医学に応用したのは、アラビアの天才医学者イブン・シーナーです。11世紀に書かれた彼の著書『医学典範』は、17世紀にいたるまで西洋の医科大学で教えられてきました。

植物から精油を取り出す「蒸留」には、錬金術が関係しています。 錬金術というとなにやら怪しげな呪術を連想させますが、実験を通してさまざまな物質を作り出す正統な学問の1つで、現代の化学の前身ともなったものです。

近世には香水産業が発達

17世紀になると、イタリア人のジョヴァンニ・パオロ・フェミニスが、ドイツのケルンで「すばらしい水=オーアドミラブル」を発売し、大評判となりました。この「ケルンの水」は最古の香水として知られますが、当時は胃薬としても使われました。これはフランスで「オーデコロン」として商標登録されています。

同じころ、ヨーロッパの貴族たちの間で香水が非常に好まれるようになり、フランス南部のプロヴァンス地方などが香水の町として発展しました。 医薬品として、そして香水として、植物のエッセンスが身近な存在として活用されていきます。

「アロマテラピー」の誕生

アロマテラピーが誕生したのは最近のことで、20世紀に入ってからです。
フランス人化学者ルネ・モーリス・ガットフォセが実験中に大やけどを負い、ガス壊疽(えそ)をおこした患部にラベンダーを塗ったところ非常に経過が良かった、というエピソードがあります。

この経験から、彼はエッセンシャルオイル(精油)の研究に没頭し、1937年に『Aromatherapie』を著しました。「アロマテラピー」という造語は彼が考案したものです。

現代のアロマテラピー イギリス式とフランス式

その後、アロマテラピーはフランスとイギリスで違った方向で発展をとげます。

フランスでは、主に精油のもつ薬理作用の面が注目されました。フランスの軍医であったジャン・バルネ博士は、殺菌や消毒など、クスリとしての精油の作用について研究を行いました。

一方、イギリスでは、こころとからだのバランスを正常化させて健康を促進するという、ホリスティックな(全体的な)アプローチがとられました。精油を希釈してマッサージを行なう手法もイギリスで確立していきます。
イギリスのロバート・ティスランドは1978年に『芳香療法・理論と実際』を著し、アロマテラピーを体系的な学問としてまとめ上げました。ロバート・ティスランドやシャーリー・プライスらの活動により、アロマテラピーは発展と大衆化を実現していきます。

日本で普及がはじまったのは90年代のころです。日本ではイギリス式のホリスティックアロマテラピーが採用されています。ストレス社会に生きる現代人に安らぎを与えるものとして、アロマテラピーは今後ますます注目を集めていくことでしょう。

まとめ

いかがでしたか?
アロマテラピーの歴史は古代エジプト時代にまで遡ります。中世には精油の蒸留技術が確立し、近世には香水産業が盛んになりました。20世紀になると、フランスで「アロマテラピー」という言葉が生まれ、フランスとイギリスでそれぞれ異なる形で発展しました。
アロマテラピーは、古代から現代に至るまで、人間と香りとの関わりを通じて進化し続けてきたのです。

著者プロフィール
元AEAJアロマテラピーインストラクター。エッセンシャルオイルの貿易実務に20年以上たずさわってきました。海外のアロマの文献などもチェックしています。

参考文献:
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダ・セラー著 フレグランスジャーナル社
「精油の安全性ガイド(上巻、下巻)」ロバート・ティスランド著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー事典」パトリシア・デービス著 フレグランスジャーナル社
「エッセンシャルオイル総覧2007」三上杏平著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト(1級、2級)」鳥居鎮夫監修 社団法人日本アロマ環境協会
「アロマテラピーの事典」林真一郎著 東京堂出版
「キャリアオイル事典」レン・プライス著 東京堂出版
「アロマテラピー図鑑」佐々木薫監修 主婦の友社
「女性によく効くアロマセラピー」鮫島浩二著 主婦の友社
「アロマテラピーの事典」篠原直子著 成美堂出版
「はじめてのアロマテラピー」佐々木薫監修 池田書店
「はじめる、楽しむ アロマテラピー」石原裕子監修 永岡書店
「アロマテラピーバイブル」塩屋紹子監修 成美堂出版

アロマテラピーは、病気の治療を目的とした医療行為ではありません。また、当サイトの情報は、精油の医学的な効能、効果を保証するものでもありません。精油を使用する際には、製品についての注意事項をよく読み、自己責任の下、正しくお使い下さい。妊娠中の方、病気のある方、健康状態のすぐれない方は、必ず事前に医師にご相談下さい。 なお、一般的な呼称に合わせて、エッセンシャルオイル(精油)をアロマオイルと表記する場合もあります。

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