アロマは犬にも効果がある?科学的な見地からお答えします

アロマと犬
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「アロマテラピーは犬にも効果あるの? 犬も人間と同じようにリラックスするの?」
「そもそも安全なの? 注意点は?」
「犬におすすめのアロマオイルってあるの?」

アロマテラピーと犬に関しての情報はネットにもいろいろとあがっていますが、人によって言うことが違っていたり、ときにはいいかげんな情報もあったりして、どれを信じてよいのか分からないという方も多いと思います。

そこで、この記事では、学術誌などに掲載された論文をもとに、アロマテラピーと犬についての科学的に根拠のある情報を、皆さんにご紹介したいと思います。大好きなワンちゃんと一緒にアロマを楽しむために、ぜひ参考にしてみてください!

目次

参考文献について

獣医学などの分野では、例えば興奮した動物に対して香りが役に立つのか、といった研究はいくつか行われていまして、論文も発表されています。

実験によって示された、客観的なデータって、とても大事ですよね。
ペットオーナーさんたちの個人的な経験談ももちろん重要ですが、この記事では、主観を排した、科学的に根拠のある情報のみをご紹介いたします。

以下は参考にした文献です。

参考文献
  1. Filip Štrbac et al. (2021) Possibilities and limitations of the use of essential oils in dogs and cats
  2. Natarajan Sisubalan (2023) Composition, Bioactivities, Safety Concerns, and Impact of Essential Oil on Pets’ and Animals’ Health
  3. Deborah L. Wells (2006) Aromatherapy for travel-induced excitement in dogs
  4. 福澤めぐみ・阿部紗裕理 (2014) ラベンダーアロマエッセンシャルオイルの吸入曝露に対するイヌの反応
  5. Migiwa Komiya et al. (2009) Evaluation of the effect of topical application of lavender oil on autonomic nerve activity in dogs

アロマテラピーは、犬に対しても効果がある?

アロマは犬にも効果がある?

アロマは犬に対しても効果があるのでしょうか? これはズバリ、Yesと言えるでしょう。特にラベンダーの香りに犬を落ち着かせる作用があることが、研究で示されています。

もちろん、人と同じですべての犬に効果があるわけではなく、個体差があるのは間違いありません。具体的な事例をみてみましょう。

ラベンダーの香りでリラックスした

ラベンダーの香りを吸入した犬の行動変化を調査した研究では、香りの濃度によって犬の姿勢や行動に違いが見られました。低濃度では立ったままの時間が増えましたが、高濃度では伏せている時間が増え、パンティング(ハアハアという早い呼吸)が減少しました。

車の移動中の興奮が軽減した

車で興奮しやすい犬を対象に、ラベンダーの香りを嗅がせる実験が行われました。その結果、犬がおとなしく座っている時間が増え、動き回ったり吠えたりする時間が減少しました。

夜間の心拍数が低下した

ラベンダーのアロマオイルを犬の耳に塗布し、自律神経の変化を測定したところ、夜間の心拍数が低下し、副交感神経の活動が高まることが確認されました。これは、ラベンダーオイルが自律神経を介してリラックスを促す可能性を示しています。ただし、被験者数(被験犬数?)は5頭で、やや少ないかもしれません。

保護施設でのラベンダー使用で、リラックス効果がみられた

動物保護施設の犬舎でラベンダーの香りを拡散したところ、犬の吠える時間が減少し、休息時間が増えました。一方、ペパーミントやローズマリーの香りを拡散した場合は、逆に活動的になる傾向が見られました。

ラベンダー以外で、犬のリラックスに良いアロマオイルはある?

カモミール・ローマン

犬のリラックスに効果があると考えられているアロマオイル(精油)は、ラベンダー以外にもいくつかあります。研究によると、カモミールスイートオレンジサンダルウッドなどが犬のストレス軽減や落ち着きに良いと考えられています。

以下、研究事例を交えて、具体的にみていきましょう。

カモミール(Chamomile)
カモミールは人間にもリラックス効果が期待される精油ですが、犬にも同様の効果があると考えられています。カモミールの香りを拡散した犬は落ち着きを示し、リラックスした姿勢を取ることが研究で確認されています。

スイートオレンジ(Sweet Orange)
柑橘系の精油の中で、スイートオレンジは犬に比較的安全とされており、ストレスを軽減し、気分を落ち着かせる効果があると考えられています。ある研究では、スイートオレンジの香りを嗅いだ犬がより穏やかな行動を示し、不安を感じる時間が減少したと報告されています。ただし、柑橘系の精油は犬によって好みが分かれるため、慎重に使用する必要があるでしょう。

サンダルウッド(Sandalwood)
サンダルウッドの香りは、心を落ち着かせる効果があることで知られています。他の動物に対して鎮静作用があることが報告されており、犬に対しても同様の効果が期待できます。犬のリラックスを目的としたブレンドオイルの中には、サンダルウッドが含まれているものが多くあります。

ベチバー(Vetiver)
ベチバーは、深いリラックス作用を持つことで知られ、特に神経を鎮める効果があるとされています。ストレスを感じやすい犬や興奮しやすい犬に対して、リラックスを促す可能性があることが示唆されています。ペット用のアロマ製品にも含まれることが多い精油のひとつです。

犬に最適なアロマオイルの使用量は?

アロマディフューザーと犬

犬の嗅覚は人間よりもはるかに発達していますが、人間と同じような量のアロマオイル(精油)を使っても大丈夫なのでしょうか? 

犬の嗅覚は人間の約1万倍から10万倍も鋭敏だと言われます。そのため、人間と同じ量の精油を使用するのは適切ではありません。犬に対する精油の適量についてはまだ確立された基準がないのが実情ですが、人間の量の1/2というのが、ひとつ参考になるデータといえるでしょう。

以下に、研究に使われたデータをもとに見ていきましょう。

アロマディフューザーによる使用例

ラベンダー精油を拡散し、犬の姿勢や行動の変化を調べた研究では、アロマディフューザー(水タンク70ml)の人間の推奨量(0.1ml)の1/3量および1/2量が使用されました。その結果、人間の1/2量を使用した場合に最もリラックスした姿勢が多く観察されました。しかし、犬種や個体差によってはこれでも多すぎる可能性があり、最小量から始めることが望ましいとされています。

車内の布へのスプレーによる使用例

犬の車移動時の興奮を抑えるための研究では、5mlのラベンダーオイルを車内の布に均等にスプレーする方法が取られました。この研究ではリラックス効果が確認されたものの、犬の嗅覚を考慮すると家庭で使用する際にはさらに少量で試すべきと考えられます。

犬の耳への塗布による使用例

ラベンダーオイルを犬の耳に塗布し、自律神経への影響を調べた研究では、0.18ml(約3滴)が使用されました。その結果、心拍数が低下し、リラックス効果が示唆されました。ただし、塗布する部位や犬の個体差によって適切な濃度が異なる可能性があるため、希釈して使う方が安全と考えられます。


リラックス以外の、効果的なアロマオイルの使い方は?

アロマテラピーと犬

リラックス目的以外にも、犬に対してアロマオイル(精油)を活用できる場面はあります。例えば、虫除け、皮膚トラブルのケア、消臭・抗菌、関節痛の緩和などです。

ただし、犬の嗅覚は非常に敏感であり、使用する精油の種類や量には注意が必要です。人間にとって心地よい香りでも、犬にとっては強すぎたり、不快に感じることがあります。そのため、低濃度(0.5%)の希釈で使用し、犬の反応を慎重に観察しながら取り入れることが重要です。

以下、具体的な使い方と推奨されるアロマオイルを紹介します。

虫除け対策

虫除けには、レモングラスやシトロネラなどが効果的です。これらの精油は、蚊やノミ、ダニを寄せ付けにくくする作用があります。

使用方法

水100mlに対し、精油1~2滴を加えたスプレーを作り、散歩前に犬の足元や体に軽く吹きかけます。ただし、顔周りには直接かけないようにし、屋外で使用してください。また、柑橘系の精油は犬によって刺激が強すぎる場合があるため、少量から試すことが大切です。

皮膚トラブルのケア

皮膚のかゆみや炎症には、ティーツリーカモミールゼラニウムなどが有効とされています。これらの精油には抗炎症作用や抗菌作用があり、軽度の皮膚トラブルをケアするのに向いています。

使用方法

ホホバオイル10mlに対し、精油1滴(約0.5%濃度)を混ぜ、患部に優しく塗布します。ただし、ティーツリーは過剰に使用すると犬にとって毒性がある可能性があるため、低濃度で行なうことが大切です。

消臭・抗菌対策

犬のベッドや室内の消臭・抗菌には、ユーカリ・ラディアータラベンダーペパーミントが有効です。これらの精油は、犬の臭いを和らげ、環境を清潔に保つ効果があります。

使用方法

水200mlに対し、精油2滴を加えたスプレーを作り、犬の寝床やカーペットに軽く吹きかけます。ただし、ペパーミントは刺激が強いため、犬が嫌がる場合は使用を控えてください。

関節痛や筋肉のケア

老犬や運動後の疲れに対しては、ローズマリーフランキンセンス、ジンジャーが役立ちます。これらの精油には血行促進作用があり、関節や筋肉のこわばりを和らげる働きがあります。

使用方法

キャリアオイル(ホホバオイルやスイートアーモンドオイル)10mlに対し、精油1滴(約0.5%濃度)を混ぜ、マッサージするように塗布します。ただし、ジンジャーは少量で試し、犬の反応を確認しながら使用してください。

犬に使ってはいけないアロマオイルは?

疲れた犬

犬にとって有害なアロマオイル(精油)もいくつかあります。特に肝臓への負担や神経毒性があるものは使用を避けるべきです。犬の体は人間とは異なり、特定の化学成分を適切に代謝できないため、精油の種類によっては中毒症状を引き起こす可能性があると言われています。

とはいえ、ちょっと香りを嗅いだくらいで体調を崩してしまう、といったものではありませんので、過度に心配しすぎる必要はありません。

問題になるのは、高濃度でのマッサージ使用長時間の拡散であり、また、もっとも気をつけなければいけないのは精油の誤飲です。犬が嫌がるそぶりをみせたときはすぐに使用を中止し、ペットがいたずらしそうな場所には精油を置かないように注意しましょう。

以下、犬にとって注意が必要なアロマオイルと、その理由について論文をもとに解説します。

ティーツリー(Tea Tree)
ティーツリー精油は強い抗菌・抗真菌作用を持ちますが、犬にとっては非常に危険です。含まれるテルピネン-4-オールやシネオールなどの成分が、神経毒性や肝臓への負担を引き起こす可能性があります。過剰に摂取した場合、嘔吐、ふらつき、低体温、発作といった症状が見られることがあります。

ユーカリ(Eucalyptus)
ユーカリには1,8-シネオール(ユーカリプトール)が多く含まれており、犬にとっては有害です。呼吸器への刺激が強く、高濃度で使用すると嘔吐や神経症状を引き起こすことがあります。特に密閉された空間での拡散は危険とされています。

ペパーミント(Peppermint)
ペパーミントにはメントールが含まれており、犬の呼吸器に悪影響を与える可能性があります。特に小型犬や気管が弱い犬種(パグ、ブルドッグなど)では、気道を刺激し、咳や呼吸困難を引き起こすことがあります。

シナモン(Cinnamon)
シナモンにはフェノール類が含まれており、犬にとっては刺激が強い成分です。皮膚に直接触れると皮膚炎やアレルギー反応を引き起こす可能性があり、吸入した場合には呼吸困難を招く恐れがあります。

クローブ(Clove)
クローブもシナモンと同様にフェノール類を含んでおり、犬の肝臓に負担をかける可能性があります。過剰に摂取すると神経系の異常や胃腸の不調を引き起こすリスクがあります。

オレガノ(Oregano)
オレガノは強力な抗菌作用を持つ一方で、犬にとっては毒性が強いとされています。含まれるカルバクロールやチモールが胃腸の刺激や肝臓への負担を引き起こし、長期的に使用すると健康被害のリスクが高まります。

柑橘系(レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)
柑橘系精油に含まれるリモネンやピネンは、犬の肝臓での代謝が難しく、蓄積すると中毒症状を引き起こす可能性があります。特に未希釈の状態では皮膚刺激が強く、皮膚炎やかゆみを誘発することがあります。

パイン(Pine)
パイン(松)も刺激が強く、吸入すると犬の呼吸器にダメージを与える可能性があります。また、肝臓への負担が大きいため、慢性的に使用すると解毒機能に影響を及ぼすことが指摘されています。

犬にアロマオイルを使用する際の注意点は?

最後に、犬にアロマオイル(精油)を使用する際の注意点をまとめておきましょう。

  • 直接、皮膚に塗布しない(キャリアオイルで希釈し、0.5%以下の低濃度で使用することが望ましい)
  • アロマディフューザーでの拡散は、少量かつ短時間にする(人間の1/2量を目安に)
  • 犬の様子をよく観察し、不快そうな反応を示したらすぐに使用を中止する
  • 幼犬、病気で弱っている犬、妊娠中の犬への使用は控える
  • 猫と同居している場合は、猫に対しても注意する(猫は精油を代謝できないため、より危険度が高い)

おわりに

いかがでしたでしょうか?
犬に対するアロマの効果について、論文のデータをもとにご紹介してきました。アロマテラピーが犬に対しても効果を発揮するということは、研究の結果からも読み取ることができます。皆さんも、香りの力を上手に活用して、愛犬のリラックスに役立ててください!

著者プロフィール
元AEAJアロマテラピーインストラクター。エッセンシャルオイルの貿易実務に20年以上たずさわってきました。海外のアロマの文献などもチェックしています。

参考文献:
「アロマテラピーのための84の精油」ワンダ・セラー著 フレグランスジャーナル社
「精油の安全性ガイド(上巻、下巻)」ロバート・ティスランド著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー事典」パトリシア・デービス著 フレグランスジャーナル社
「エッセンシャルオイル総覧2007」三上杏平著 フレグランスジャーナル社
「アロマテラピー検定テキスト(1級、2級)」鳥居鎮夫監修 社団法人日本アロマ環境協会
「アロマテラピーの事典」林真一郎著 東京堂出版
「キャリアオイル事典」レン・プライス著 東京堂出版
「アロマテラピー図鑑」佐々木薫監修 主婦の友社
「女性によく効くアロマセラピー」鮫島浩二著 主婦の友社
「アロマテラピーの事典」篠原直子著 成美堂出版
「はじめてのアロマテラピー」佐々木薫監修 池田書店
「はじめる、楽しむ アロマテラピー」石原裕子監修 永岡書店
「アロマテラピーバイブル」塩屋紹子監修 成美堂出版

アロマテラピーは、病気の治療を目的とした医療行為ではありません。また、当サイトの情報は、精油の医学的な効能、効果を保証するものでもありません。精油を使用する際には、製品についての注意事項をよく読み、自己責任の下、正しくお使い下さい。妊娠中の方、病気のある方、健康状態のすぐれない方は、必ず事前に医師にご相談下さい。 なお、一般的な呼称に合わせて、エッセンシャルオイル(精油)をアロマオイルと表記する場合もあります。

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